忍者ブログ
140字って、少なすぎるよね
<< 08  2024/09  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30    10 >>


2024/09/28 (Sat)                  [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/07/02 (Mon)                  ラブストーリー
とある小さな森の小屋に、一人の女の子が住んでいました。昔、女の子はお母さんと一緒に暮らしていましたが、病気でお母さんが亡くなってからはずっと一人です。
時々寂しいと思うこともあったけれど、女の子は森のなかで、平穏な毎日を送っていました。
そんなある日、一人の男の人が女の子の小屋を訪ねてきました。男の人は女の子が見たこともない立派な身なりをしていました。女の子は、立派な身なりもそうですが、男の人すら見たことがなかったので、たいそう驚きました。
「まぁ、あなたは誰?どこから来たの?」
女の子は尋ねます。
「私はただの旅人です。どうか一晩泊めてください。」
旅人と名乗る男の人は、そう言って頼み込みました。
女の子は、優しい心を持っていたので、旅人を泊めてあげることにしました。それに女の子は、自分以外の人を見るのがとても久し振りだったので、どこか物珍しい気持ちもあったのです。
旅人は、女の子に、森の外の話をたくさん聞かせました。たくさんの人が暮らす街のこと、大きな大きな海のこと、街の社会の仕組み…
どれも女の子にとっては新鮮で、面白く、時に奇妙で、心踊るものでした。
「旅人さん、良ければまた明日も、お話を聞かせてください」
女の子は、目を輝かせながら、旅人に請いました。旅人は、ちっとも嫌がらずに、次の日も、その次の日も女の子に世界の話を聞かせました。話だけではなくて、「街」へ行かなければ手に入らない、ぜんまい仕掛けのおもちゃもくれました。女の子には、命ないものが動くのが、とても不思議に思えました。
女の子は、旅人をとても大切だと思いました。この人がいなければ私は生きていけないと思いました。
旅人と共に過ごす日々は、女の子にとってかけがえのないものだったのです。
そんなある日、旅人が突然姿を消しました。
女の子が、亡き母に教わった歌を、旅人に聴かせた翌日のことでした。
女の子は驚いてあたりを探しまわります。森の奥かしら?泉に水を汲みに行ったのかしら?けれど、どこにも旅人はいないのです。どこを探しても、旅人はいなくなってしまったのです。
女の子は、嘆き悲しみました。
いなくなってしまった大好きな人を、朝から晩まで嘆き続けました。
泣いて泣いて、涙が枯れ果てても、旅人は戻ってきませんでした。
けれど女の子は、旅人が戻ってくるのを待ちました。私が待っている限り、優しいあの人は、必ず戻ってきてくれるのです。そしてまた微笑んで、女の子に色々な、世界の話を聞かせてくれるのです。
だから、優しいあの人を、女の子は待ちました。
女の子はいつの間にか、女性になっていました。
優しいあの人は、まだ来ません。
けれど、いつか必ずあの人は来てくれるのです。
女性になった女の子は、あの人がいなくて、外の世界が学べないから、森の外に行ってみることにしました。森の外は、意外と近かったのです。
実際に見る森の外の世界は、あの人が語った言葉では語り尽くせないほど広く、複雑で、驚きに満ちていました。女の子は、旅人に教わった以上の、色々なことを知りました。
世界の全てを知り尽くせば、旅人が戻ってきてくれると信じていました。そして、いつあの人が戻ってきてくれてもいいように、夕暮れには必ず森の中の小さな家に帰りました。そして、旅人と過ごしていた時と同じように過ごすのです。女の子は、街に出て、世界を知ったけれど、あの日と何一つ変わらぬように、あの人をいつでも迎えてあげられるように、過ごすのです。
女の子はいつしか中年になり、老婆になりました。
森の中の家は、とても古くなってしまいましたが、家の中は少女だった頃と何一つ変わりません。旅人がくれた、ぜんまい仕掛けのおもちゃもそのままです。
かつて少女だった老婆は、ありったけの知識を詰め込みました。けれど、知らないことはまだまだたくさんあるのです。あの人に会うためには、もっとたくさん、もっとたくさん世界を学んで、もっともっと賢くなって、もっとずっと思慮深い、大人にならなきゃいけないのです。世界の全てを知れば、必ず優しいあの人は、よく頑張ったねと言って、笑顔で戻ってきてくれるのです。そして、まだあどけない少女にするように、頭を優しくポンポンと撫でて、抱き締めてくれるのです。
そんなある日、森の家のドアを叩く音が聞こえました。
老婆は、遥か昔の、そう、あの人と過ごした、少女の頃の顔に戻って、扉に駆け寄ります。長年悩まされた膝や腰の痛みも、今ばかりは忘れていました。そしてずっと用意していた言葉を言いながら、すっかり色褪せてしまった緑のドアを開くのです。
けれど、そこにいたのは、旅人とは似ても似つかない、鎧を着た屈強な男達でした。
何事か分からず、目を白黒させる老婆。そんな老婆を、男達は問答無用で押さえ付け、縄で縛り、荷馬車に放り込んだのです。
それから三日、老婆は殺されました。時の王様が、魔女狩りの令を出したのです。独りぼっちで、森の中、学び続ける老婆が、世間にはどれだけおかしく見えたでしょう。
けれど、老婆は、かつて少女だったその人は、ただ待っていただけなのです。少女の人生で、最も幸せな時を共に過ごした優しい人を、待っていただけだったのです。
この話は、ここでおしまい。
PR
// この記事にコメントする //
お名前:
タイトル:
文字色:
メールアドレス:
URL:
コメント:
パスワード:   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10]  [9]  [8]  [7


カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
フリーエリア
最新コメント
プロフィール
HN:
苺月、もしくは みるきぃ☆ぬーぬー
性別:
女性
自己紹介:
いつもはTwitterにいるです(‘ω’)
zuki_doki_mezki よかったらフォローしてやってください
バーコード
ブログ内検索
P R

Designed by TKTK
PHOTO by *05 free photo

忍者ブログ [PR]